重なる身体と歪んだ恋情
司の諌める声になど耳を傾けず感情のまま、私は行動した。
『大野芳史』
大野海運の新社長。
元々は国内だけの商売を世界にまで広げる算段をしているらしい。
そのために金を借り倉庫や新船の準備に従業員の補充まで。
「それに葛城(ここ)のことも探っていたようで」
すべて佐和子から仕入れた情報だ。
「奏様と私のことも吹聴しているようです」
「……鼻の聞く野良犬ですね」
「そして、奏様の奥様が不義を働いているとも」
「……」
「噂です」
「当たり前でしょう」
そう吐き捨てた私に佐和子が擦り寄ってくる。
「奥様を愛してらっしゃるのね」
「まさか。彼女はまだ子供ですよ」
「でも、私は必要ではなくなったようで」
一糸纏わぬ肌に肌襦袢を重ねる。
「奥様が、羨ましい」
「彼女からすれば貴女の感想は心外でしょうね」
「お子様だからですよ」
そんな佐和子の台詞に自嘲じみた笑みを浮かべた。
実際、佐和子を抱いてもどんなに声を上げさせても、
なにも感じなかった。
似ていると思った声ですら千紗とは全然違う。
重ねる肌も繋がった瞬間も、千紗とは違って……。
「それでは、またのお越しを待ちしております」
長襦袢一枚の姿で深々とお辞儀され、私は葛城を後にした。
『大野芳史』
大野海運の新社長。
元々は国内だけの商売を世界にまで広げる算段をしているらしい。
そのために金を借り倉庫や新船の準備に従業員の補充まで。
「それに葛城(ここ)のことも探っていたようで」
すべて佐和子から仕入れた情報だ。
「奏様と私のことも吹聴しているようです」
「……鼻の聞く野良犬ですね」
「そして、奏様の奥様が不義を働いているとも」
「……」
「噂です」
「当たり前でしょう」
そう吐き捨てた私に佐和子が擦り寄ってくる。
「奥様を愛してらっしゃるのね」
「まさか。彼女はまだ子供ですよ」
「でも、私は必要ではなくなったようで」
一糸纏わぬ肌に肌襦袢を重ねる。
「奥様が、羨ましい」
「彼女からすれば貴女の感想は心外でしょうね」
「お子様だからですよ」
そんな佐和子の台詞に自嘲じみた笑みを浮かべた。
実際、佐和子を抱いてもどんなに声を上げさせても、
なにも感じなかった。
似ていると思った声ですら千紗とは全然違う。
重ねる肌も繋がった瞬間も、千紗とは違って……。
「それでは、またのお越しを待ちしております」
長襦袢一枚の姿で深々とお辞儀され、私は葛城を後にした。