重なる身体と歪んだ恋情

晩餐会には当然のように一人で出席。

その際の周りの反応は、


「え? お一人で?」

「今夜のお連れ様はいずこに?」


なんてものばかりで苦笑するしかない。


「まぁ、お一人だなんて。ご一緒に飲みません?」


そんな誘いも「用がありますので」とドレスの裾に触れることなく断った。

だから出席したものの必要な挨拶だけを済ませて、頼まれた商談の交渉だけ済ませて。


「妻の体調が悪いので」


これを免罪符に早めに帰った。



いつもよりかなり早い帰りの私を見て千紗は驚いた表情を。


「あ、お帰りなさい……」


彼女の台詞に苦笑しつつも「ただいま帰りました」と答えた。

それでも彼女から驚きの表情ははがれなくて、


「どうかしましたか?」


と聞けば、


「い、いえ。余りにお帰りが早いので」


素直すぎる回答を。だから私も素直に、


「貴女が居ないのに。ひとりでダンスは踊れないのですよ」


そう伝えたのだけど、彼女は怪訝そうな顔で私を見るだけだった。



次の日も抜けられない誕生日会と言う名の食事会。

けれどもう千紗には聞かなかった。

そして緑川が休みのためタクシーで会場に。

司が運転手を申し出てくれたが、


「如月がいないと困るでしょう?」


私がそう言うと千紗は押し黙ってしまった。
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