重なる身体と歪んだ恋情
朝、目が覚めると奏さんは私の隣にはいなかった。

自分がいつ眠りに付いたのかも知らない。

けれど気だるい身体は昨日のことをしっかりと覚えているようで、なかなか体を起こす気にはなれなかった。

そっと手を伸ばせば冷たいシーツの感覚に泣きそうになってしまう。

これが現実。

冷たいシーツを握り締めて大きなベッドの上で小さく丸くなって――。


「千紗さん」

「――っ」


彼の呼ぶ声に身体が震えた。


「まだお休みになってますか?」

「……あっ、えと」


思わず声を返してしまうと、ガチャリと重たいドアの開く音がした。


「良かった、目は覚ましておいででしたね」

「すっ、すみませんっ、こんな格好で……」


体を起こしながらシーツを巻きつけるとクスリと笑い声が聞こえる。


「いえ、構いませんよ。ただ今から朝食をと思いましたのでお誘いに上がりました」

「あっ、あのっ、お先に召し上がっていただいてもっ」


慌ててそう答えると彼は笑顔を作って、


「お話もあるので。あちらでお待ちしてますね」


そう言うと、部屋から出て行った。
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