重なる身体と歪んだ恋情
レストランに着き、テーブルに案内される。

座るとすぐ、テーブルに並べられたのはお味噌汁にご飯、そして焼き魚に煮物。

如月が頼んでくれたのだろう和食だった。


「たまにはこういうのもいいですね」


そう言いながら日本茶を口にする彼には少し似合わない気もする。


「あの、それでお話と言うのは……?」


食べ終わりそう聞くと彼もお茶を飲み「そうでしたね」と口にする。


「やはり食後はコーヒーがいい。それを飲みながら話しましょうか」


そう言って彼は私の分のコーヒーも頼んだ。

いつも如月が淹れてくれてるものより刺々しい香りがする。

それを少し口にして奏さんを見ると、彼も同じ感想なのか少しだけ不快そうな顔をした。

そして、


「お話と言うのは貴方のお兄様のことです」

「兄、の?」


彼は本題に入った。

借金を重ねて失踪してしまった兄様。


「もしかして――」


私の声に彼はコクリと頷く。


「見つかりました」

「ど、どこで!?」


焦ってカップを置くと食器がぶつかる不協和音が店内に響く。


「落ち着いて」


集る視線と彼の言葉に浮いた腰を落ち着かせて、小さく深呼吸した。

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