重なる身体と歪んだ恋情
「あ、あの、それで兄は今どこに?」
借金をして家を捨ててしまった兄様。
どうなっていても気にならない。
そう思っていたけれど、それでも気になってしまうのはやはり血のつながりだろうか?
次の言葉を待つ私の前で奏さんは優雅にコーヒーを口に運ぶ。
そして、
「病院です」
兄の居場所を教えてくれた。
「どこの病院ですか? 私、今日にでも会いに」
「それはやめたほうがいい」
「え?」
私が桜井を出た人間だから?
だとしても桜井にはもうお祖母様しかいらっしゃらない。
そのお祖母様だって入院中なのだから私しか――。
「流行り病です。移ると危険とされるやまいですので病院でも隔離されていたそうで。そのため、発見も遅れました」
「流行り……」
一体、何の病気なの?
隔離されるほどの病気だなんて。
「大丈夫です。病院の方にはこちらから連絡を取ってます。本題はここからです」
震えだしそうな私の前で彼は淡々と話を進めた。