重なる身体と歪んだ恋情
「こ、小雪?」
「はい」
ブラシを拾いながら私を見上げる小雪。
彼女も知ってるのかしら?
だからさっき私の気分なんて聞いたの?
「……いえ、なんでもないわ」
そうよ、小雪は昨日私がお風呂に行ったことも知らないはず。
知ってるのは、
彼だけ。
って、そうなの?
お風呂からここまで連れてきたのも、服を着せたのも――。
そんな想像に頭がガンガンする。
まるで鈍器で頭を殴られてるみたいに。
「千紗様? どうかなさいましたか?」
「なっ、なんでもっ」
ど、どうすれば!?
とりあえず!
「あのっ、そう! 気分が悪いから朝食はいらないわ!」
「はっ? えっ? あ、あの」
「だから彼にも先に食べてって伝えて頂戴!」
そう言って、私は小雪の手からブラシを受け取ってベッドに。
「あの、どこが……、あっ! お医者様を」
「いらないってば!」
「――っ」
振り返ってそう言うと小雪は肩を震わせて。
あぁ、ダメだわ。
小さな自己嫌悪。
「少し寝てれば治るから。本当に大丈夫だから、朝食だけはいらないと伝えて」
自分を落ち着けて静かにそう告げると、小雪は少しホッとするような表情を見せて、
「かしこまりました」
と頭を下げて部屋から出て行った。