重なる身体と歪んだ恋情

閉まるドアの音を聞いて、本気でベッドに寝ころがる。


「はぁ……」


最低最悪。

それってやっぱり彼に……。

そう考えるだけで恥ずかしくて死にそうになる。

でも毎日こうして仮病を使うわけにもいかないし、いつかは彼を顔を合わせないといけないわけで。

だからもう一度ため息をついてお布団の中にもぐりこんだ。


……彼はお風呂でのぼせた私を見てどう思ったのかしら?

馬鹿な女?

ううん、愚かな子供?

呆れて離縁したくなった、とか。


そんな考えにお布団の中で首を振る。

だってそれは困るから。

離縁されたらあの家は多分、売られてしまう。

お兄様がどうなろうと私の気にすることでは無いけれど。


「お祖母様……」


年老いたお祖母様をあの家を奪うことなんて出来ない。

そっとお布団を避けて体を起こしてみる。

やはり、『ありがとうございました』と言うべき?

こういったことは早いに越したことは無いわよね?

でも、どんな雰囲気でこの話題を切り出したら――


「千紗さん」

「――っ!」


叩かれるドアの音に、そして彼の声に、

心臓が止まりそうになった。

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