重なる身体と歪んだ恋情
思わず子供のようにお布団に隠れてしまう私。
ダメだとわかっているのに「はい」という簡単な言葉が出てこない。
「千紗さん」
もう一度呼ばれる声にお布団の中でビクッと肩を震わせた。
「入りますよ」
その声に体を硬く強張らせて。
絨毯の上でも彼の足音が聞こえる。
それは大きくなって、
「気分が悪いとか」
すぐ傍で止まった。
「――だっ、大丈夫ですっ!」
お布団の中から何とか声を絞り出すと、
「……みたいですね」
「えっ?」
クスクス笑う声が落ちてきた。
「私は朝食を終えましたので、後でごゆっくりどうぞ」
「……」
なに、このすべてを見透かしたような台詞。
そっとお布団から顔を出すと、
「まるで天岩戸ですね」
なんて笑う彼がいて。
その笑顔が酷く嫌でもう一度お布団の中に逃げようとしたのに。
「――っ」
「見えませんでしたよ」
そんな台詞に逃げることも出来なかった。