重なる身体と歪んだ恋情
閉まるドアの音が嫌に大きく聞こえる。そして、
「次はないよ、小雪」
小さく聞こえる声に背中が冷たくなった。
妙にドキドキする胸を押さえてベッドから足を下ろす。
こんなことになるなんて……。
微かに震える足、見える着物が何故かみすぼらしいものに見えてきて。
意味もなく泣きたい衝動に駆られた。
「千紗様」
聞こえてきたのは小雪の声。
「……はい」
私はそう答えてそのままドアへ。そして、小雪が開けるのを待たずに自分でドアを開けた。
「朝食、どうなさいますか?」
「……」
昨日と変わらない小雪。
「ごめん、なさい」
小さな声でそういうと、小雪は不思議そうに私を見つめた。
「千紗様?」
「いえ、だって……」
なんと言っていいのか分からない。けれど、
「大事に至らなくて安心しました。千紗様、お気になさらず」
ニコリと笑ってくれる小雪にほんの少しだけ心が軽くなった気がした。
「朝食、いかがなさいますか?」
その声に、「えぇ、お願い」と答えると小雪は「かしこまりました」と頭を下げて先に階段を下りていく。
「スープ温めますから先にお席にどうぞ」
振り返ってそう言ってくれる小雪。
だから、
「ありがとう」
そう言うと小雪はもう一度ニコリと笑ってくれた。