重なる身体と歪んだ恋情
広間に入るなり鼻腔をくすぐる美味しそうな香り。
席に近づくと、
「おはようございます、千紗様」
如月がそう言って椅子を引く。だから私は「おはよう」と言いながらその椅子に座った。
無駄に大きなテーブルには私のためだけの朝食が置かれる。
そして、
「どうぞ、千紗様」
小雪が温めなおしたスープを置いて完成。
それを口にすると熱くて、スプーンで掬ったスープにふぅと息を吹きかけた。
熱いけれど勿論美味しい。
用意されたパンもバターも、添えられた野菜のソテーも全部美味しいのだろう。
それでもお味噌汁が飲みたい、
と思ってしまう私は贅沢なんだろうか?
「千紗様、本日は奏様より買い物についていくよう仰せつかっていますが」
食べる私の傍でコーヒーを注ぎながら聞いてくる如月。
「えぇ、そう言ってたわね」
まるで他人事。
けれど私の台詞など如月は気にすることなく小さく頭を下げる。
「でしたらタクシーを用意しましょう。車は奏様が御使用されていますので」
いくらこの家がお金持ちでも車は1台しか無いらしい。
勿論、1台あるだけでもたいしたものだけど。
「タクシーなんて……」
もしかしてこの家に呼びつけるのかしら?
普通、タクシーは上野駅か新橋駅あたりに止まってるのを捕まえるのだけど。
それに乗って横浜まで?
一体どれくらい時間が――。
「あ」
「千紗様?」
「鉄道がいいわ!」
私の声に如月は「はい?」と奇妙な声を返した。
席に近づくと、
「おはようございます、千紗様」
如月がそう言って椅子を引く。だから私は「おはよう」と言いながらその椅子に座った。
無駄に大きなテーブルには私のためだけの朝食が置かれる。
そして、
「どうぞ、千紗様」
小雪が温めなおしたスープを置いて完成。
それを口にすると熱くて、スプーンで掬ったスープにふぅと息を吹きかけた。
熱いけれど勿論美味しい。
用意されたパンもバターも、添えられた野菜のソテーも全部美味しいのだろう。
それでもお味噌汁が飲みたい、
と思ってしまう私は贅沢なんだろうか?
「千紗様、本日は奏様より買い物についていくよう仰せつかっていますが」
食べる私の傍でコーヒーを注ぎながら聞いてくる如月。
「えぇ、そう言ってたわね」
まるで他人事。
けれど私の台詞など如月は気にすることなく小さく頭を下げる。
「でしたらタクシーを用意しましょう。車は奏様が御使用されていますので」
いくらこの家がお金持ちでも車は1台しか無いらしい。
勿論、1台あるだけでもたいしたものだけど。
「タクシーなんて……」
もしかしてこの家に呼びつけるのかしら?
普通、タクシーは上野駅か新橋駅あたりに止まってるのを捕まえるのだけど。
それに乗って横浜まで?
一体どれくらい時間が――。
「あ」
「千紗様?」
「鉄道がいいわ!」
私の声に如月は「はい?」と奇妙な声を返した。