重なる身体と歪んだ恋情
食べ終わって部屋に戻ろうとすると、
「千紗様」
如月が私を呼び止める。
「なに?」
聞き返すと如月は深々と頭を下げて、
「申し訳ありませんが、お召し物のお着替えを」
「……」
彼の声に自分の姿を上から眺めてみる。
お祖母様から頂いた大島。
別にこれで外出したって――。
「駅や鉄道では多くの方が行きかいます。お着物では少々ご不自由かと」
「大丈夫よ。別に私は」
「でなければ、タクシーでの外出をお考えください」
「……」
これではまるで私がダダを捏ねてる子供のよう。
どちらかしか選べないのなら、
「着替えます」
そう言って階段を上がり始めると、
「申し訳ありません」
後ろから如月の声が聞こえた。