重なる身体と歪んだ恋情

食べ終わって部屋に戻ろうとすると、


「千紗様」


如月が私を呼び止める。


「なに?」


聞き返すと如月は深々と頭を下げて、


「申し訳ありませんが、お召し物のお着替えを」

「……」


彼の声に自分の姿を上から眺めてみる。

お祖母様から頂いた大島。

別にこれで外出したって――。


「駅や鉄道では多くの方が行きかいます。お着物では少々ご不自由かと」

「大丈夫よ。別に私は」

「でなければ、タクシーでの外出をお考えください」

「……」


これではまるで私がダダを捏ねてる子供のよう。

どちらかしか選べないのなら、


「着替えます」


そう言って階段を上がり始めると、


「申し訳ありません」


後ろから如月の声が聞こえた。
< 48 / 396 >

この作品をシェア

pagetop