重なる身体と歪んだ恋情
けれど、結婚式のとき。
女は化けるものだと言う言葉を思い出した。
真っ白なドレスは白磁のような肌を持つ彼女によく似合って。
それでも彼女の表情が晴れることはなかったが。
元々公家のお嬢様。
桐生家の中でも彼女は凜とした態度を崩さない。
使用人のいる生活にも慣れているのだろう。
だからこそ、『浴室溺死寸前事件』には驚いた。
私に言うのが恥ずかしくとも、年の近い小雪になら言えるだろうに。
いや、驚いたのはそこだけじゃない。
奏様にも。
「優しく介抱」
なんて、彼には似合わない行動。
実際そうしたのはなぜなのか。
どうしても列車に乗りたいという彼女が揺れる列車の中で私の腕を必死に掴む。
どう見たって彼女はまだ『女性』とは言いがたい。
まるでお子様でお嬢様で。
奏様も、そういうことなんだろうか?
ならなぜ彼女を妻に迎えたのか。
骨董収集など欠片の興味も示さない方なのに。
相変わらず、奏様の考えていることはさっぱり分からない。