重なる身体と歪んだ恋情
それにしてもここにあるドレスは先端を行き過ぎてる。
ここまで短い丈のドレスはヨーロッパでも珍しい。
「これからはこういったものが流行る時代なのです」
確かに彼女の言うとおりかもしれないが……。
ドレスを身体に当てられて少し困ったように私を見る千紗様。
だから、
「とてもお似合いになると思いますよ?」
そう言うと千紗様は、
「……そう、かしら?」
といって鏡の中を自分を眺めて、小さく笑う。
いや、実際似合ってるから問題は無いか。
それにドレス選びをしてる彼女は実際楽しそうに見える。
小さくとも、女性。
だからその後、街中を歩くことを勧めれば彼女は嬉しそうに微笑んで、
「あ、あのドレス素敵ね」
とはしゃいで。
これが年相応の姿なのだ。
それが証拠に、
「そろそろ帰りましょうか」
こんな私の声には俯いてしまって。
可哀想だとは思うが仕方ない。
いずれ帰らなくてはいけないのだから早いか遅いかだけの話。
彼女はあの家に帰りたくは無いのだろけど。