重なる身体と歪んだ恋情

それから少しして。

小さな窓から見える景色は見覚えのあるものに。

そして、


「どうぞ、千紗様」


車は止まって。

如月が差し出す手を取って車から降りた。

あたりはほんのりと闇が支配する。

夕日の姿はどこにもなくて。

今日という一日はなんて短いのかしら?

心からそう思った。


「もう夕食の用意が出来ていると思いますがいかがなさいますか?」


その声に如月を見上げる。

思い出したのは今日のお昼で、

私の言いたいことが分かったのか、


「奏様はまだお帰りでは無いと思います」


そう言って如月が見たのはいつもなら車の置かれてる場所。

だけど、そこには何もなくて。

別に奏さんと食べたいわけじゃない。

でも、如月と一緒に。

なんてことも無理だと知ってるから。


「ねぇ、如月」

「はい、千紗様」


子供だと思われてもいい。


「また買い物に行きたいわ」


そう言うと、


「いつなりと」


如月はそう言って恭しく頭を下げた。
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