重なる身体と歪んだ恋情
夕食はいつもどおり一人で。

こんなことに慣れたいわけじゃないけれど、もう諦めるしかない。

寧ろ、奏さんが居ないことにほっとしてる。

なんて。

私たちは夫婦として大事なものを失ってる。

いいえ、違うわ。

元々無かったのだから失ったわけじゃない。

得られなかったと言ったほうが正しい。

これは共に時間を重ねたら見つかるものなのかしら?


淡々と食事を終えて自分の部屋に。


「千紗様、湯殿の用意が出来ておりますが」


小雪の台詞にベッドへ座り込むのを止めた。

先日のことがあったからなんだと思う。


『次はないよ』


思い出したのは冷たい奏さんの台詞。

だから、


「そうね、お願いするわ」


そう言ってくるりとまた部屋を出ることにした。



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