重なる身体と歪んだ恋情
式は滞りなく終了。
呆気ないほどに。
これで私は彼の妻になったの? そんな事を思いながら隣を見上げたけれど彼の薄い笑みからは何の感情も読み取れない。
「それではうちに帰りましょうか」
「……」
『帰る』という言葉が私の中で酷く違和感を生む。だって、
「あぁ、千紗さんは初めてでしたね。気にいっていただけるとうれしいのですが」
彼の言うとおりで。
すると彼は自動車のドアを開けて私に乗るよう促した。
また酷い音を立てる乗り物に乗って場所を移動。
川沿いを走り林を抜けてイチョウの並木道をくぐって。
「ここです」
彼がそう言うと車はキィと甲高い音を立てて止まった。
開けられたドアから外に。
日本家屋の桜井家とは違い、庭には池もなくただ広い芝生が広がる。
そして目の前にあるのは豪奢な西洋の建築物。
まるで宮殿、とでも言えば伝わるかしら?
女の子なら誰もが憧れるような風景が私の目の前にあった。