重なる身体と歪んだ恋情
それから小雪に手伝ってもらいながら支度して。
1階に下りたときには、
「どうぞ」
「……」
ダイニングテーブルに奏さんはいらっしゃらなかった。
当然、よね。
時計を見れば8時30分を少し回った頃。
完全に妻失格だわ。
「奏様はお帰りになりませんでした」
「えっ?」
私の考えを読み取れるのか、紅茶を注ぎながら如月がそう教える。
「少し仕事が立て込んでまして。昨夜は事務所にお泊りとの連絡をいただきましたので」
「……そう」
そんな報告に少しホッとして如月の入れてくれた紅茶を口に運ぶ。
「あら?」
「お気に召しましたか? イギリスより取り寄せたハーブなるもののお茶になります」
「ハーブ……」
聞いたことの無い名前。
そして口に入れたこのお茶も初めての味。
「色々と効能があるそうで。うちでも育てようかと奏様が」
「育てる? この家にはそんな場所があるの?」
「はい。ではこの後そこへご案内いたしましょう」
「……そう、ね」
この屋敷にはまだ私の知らない場所があるらしい。