重なる身体と歪んだ恋情

「このまま中庭に。ささやかですがパーティーの用意をしていますので」


なんでもないことのように口にする彼。

中庭もあるなんて、この家はどれだけ大きいのかしら。


「あぁ、部屋は後で如月に案内させます。使用人の紹介もおいおいと言うことで」

「……はい」


私の部屋が用意されてるらしい。

その台詞はかなり私に安心を与えてくれた。

夫婦だから部屋もなにも一緒で、なんていわれたら窒息死してしまうかも。そう思ってたから。


「寒くありませんか?」

「えっ?」


驚いて顔を上げた瞬間、彼はタキシードの上着を脱いでそっと私の肩に。


「パーティーは外ですから。でもその格好は似合いませんね」


確かに4月とはいえ、風が吹けばまだ肌寒い。だから、


「後で家のものにショールでも持って越させましょう」


彼の声に「はい」と答えておいた。
< 9 / 396 >

この作品をシェア

pagetop