重なる身体と歪んだ恋情
「ゲーテ、読みますか?」
「あるんですか?」
すぐさま聞き返す私に奏さんは「えぇ」と言いながらグラスにあるワインを口に。
「ついでに言えば平塚らいてうの本もありますよ」
「――読みたいです!」
思わず立ち上がると椅子がガタンと倒れてしまって。
「千紗様」
「ごっ、ごめんなさい!」
如月が小さくため息を付きながら直してくれた。
目の前の奏さんはこんな私を見てクスクス笑ってたり。
「さあ落ち着いて。食べ終わったら私の書斎に行きましょう。他にもお気に召すような本があるかもしれませんから」
そう言われて私は椅子に座りなおし、
「……すみません」
とフォークとナイフを手にした。