重なる身体と歪んだ恋情
急いで食べる私に、
「ゆっくりどうぞ。本は逃げませんから」
奏さんはクスクス笑う。
私は彼を思い違いしていたのかしら?
本当はいい人でちゃんと私のことを大切に思ってくれているの?
そう考えるとなんだか申し訳なくて後ろめたくて、彼の目が見れなくなってしまった。
最後に運ばれてきたのは苺とさくらんぼと枇杷の盛り合わせ。
「これは書斎で食べましょうか」
「えっ?」
「早く見たいのでしょう?」
そのお皿を持って立ち上がる奏さんに私は「はい」と答えて立ち上がった。
彼の後を付いて階段を上る。
そして、
「どうぞ」
いつもは通り過ぎる彼の書斎。
開けられるドアから私は初めて足を踏みいれた。
「……凄い」
「そうですか?」
彼は簡単にそう返したけれど、この本の量は凄い。
しかもよく見れば英語のタイトルまで。
「適当に買いあさったので統一性は無いのですよ。整理は弥生にさせてます。読みたいものがあるなら彼女に聞くといいでしょう」
奏さんがそう言うとドアの外、弥生が小さく頭を下げた。