星に願いを
外に出た所で、美紀の弾む声が車に寄りかかっている男性まで届いた。


男性は私を見ると軽く一礼した。


その男性は端正な顔立ちで、側を歩いている人が振り返るほどだ。


背が高く手足が長いからか、ダークグレーのスーツを格好よく着こなしていた。


スッとした感じがクールな印象を与える。


美紀は嬉しそうにその男性に寄り添った。


「ほしちゃん、紹介するね。こちら漆原悠【うるしばらはるか】さん。」


「はじめまして、この病院で看護師をしている袴田星子です。」


そう自己紹介をすると、悠さんは私の顔をじっと見たまま、黙り込んでしまった。


美紀は固まった悠の肩をトントンと叩いて、「学校遅れちゃうから。」と催促した。


「ほしちゃん、またね。次はランチしようね。」


後部座席に乗ると、窓を開けて手を振った。


車が発進するのを見届けながら、先日のスーツの人の事を思い出した。


美紀ちゃんのまわりには、先日のスーツの人といい悠といい、素敵な男性が多い気がする。


(それにしても、スーツの人も今日の悠さんも、何か私に言いたげだったような…)


いやそんなはずはないか。


だって私は知らない。


もしかして寝不足?


こんな日は、早く家に帰って寝よう…。





< 11 / 133 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop