星に願いを
「…え?」


ポカンとしている私を見て悠がちょっと噴出した。


「プッ、兄貴、袴田さん固まったよ。」


「…兄貴?」


(常務のこと兄貴って…えぇーっ?)


もしかして…。




「そう、俺たち兄弟だから。」悠が答えた。


心の中を読まれて、星子は益々真っ赤になった。


(そりゃそうだ。同じ名字だし)


妙に納得した星子だが、ハッと我に返って考えた。


(何故私にこの話を持ってきたのだろう?)




「美紀ちゃんが何か言っていたのでしょうか?」


「君が素晴らしい看護師だと言っていましたよ。」


常務の言葉に照れてしまった。


「いえそんな…って、それだけ…ですか?」


「他に何かあるのかな?」


これといって思い当たる節もなく、何も言えなかった。


今はまだ看護について学んでいる途中…色々思いめぐらせて言葉に詰まる。


「あのぉ、…突然スタッフと言われてましても…」


常務が再度声をかけた。


「すぐに返事しなくていいですよ。」


「いや、その、何というか…。まだ看護の道を究めたわけでなく…」


何とかうまく断ろうと思っていたのに、今度は常務に心の内を読まれた。


「自信持っていいですよ。
それにこの話はここにいる悠の希望です。
君を獲得しないとプロジェクトリーダーを引き受けないと我儘言ってね。」


ニヤッと悠の口元が上がった。


「もちろん、美紀さんにも話をしました。
袴田さんならできると太鼓判押してくれてね。」


(み、美紀ちゃんたら…勝手なこと)


まだ状況をよく飲み込めないでいる星子に、悠が落ち着いた声で語りかける。


「俺もこんな大きなプロジェクト初めてだし、君のような人に力になって欲しいと思って。」


「じゃぁ決まりね。」と言いながら、常務が席を立った。


「失礼、これから会議があるので、後のことは又連絡入れます。」




常務が足早に応接室を出て行ってしまったので、応接室に悠と二人きりになってしまった。


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