星に願いを
――

「お母さん、いってらっしゃい!」


玄関で靴を履くお母さんに元気に言った。


「ほしちゃん、いつもごめんね。後のことよろしくね。」


星子の手にいつもの品を握らせた。





お母さんは病院で働いていて、夜勤の日は家に帰らない。


お母さんと二人暮らしの私は、その間一人ぼっちだ。


「困ったことがあったら、お隣の和さんに言ってお電話借りてね。」


裕福ではない我が家には電話がなかった。




「それから…お願い事があったらいつものこれにお願いしてね。」


私の手には、いつも出掛ける時にお母さんが握らせてくれた、お星さまの形のキャンディー。


「うん大丈夫だよ!いってらっしゃい!」





これがお母さんと最後の会話になるとは、この時はわからなかった。


今から考えると、お母さんの顔色悪かったよね。


もっとお母さんのこと、見ててあげればよかったな…。



――



天井のライトにかざした、悠にもらったキャンディーが涙でにじんで見えなくなっていた。
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