星に願いを
「兄貴は…知ってたの?」



しばしの沈黙の後、創が椅子をクルッと窓に向けた。


「いや。美紀さんの退院の時に知ったよ。」



創は天井まである大きな窓に映りこむ悠を見て、ため息をついた。


「お前は忘れてなかったんだろ?」


悠は真っ赤な顔をして「当り前だろう?」と頭をかいた。


「まぁ、彼女は覚えてない感じだったな。」


図星なことを言われ、ちょっとカチンときた。


「昔のことだ。お前はこれから大事な時期だ。くれぐれも変なこと考えるな。」




「なっ!」悠は創の牽制に語気を荒げた。


「やっと会えたんだぞ。俺が何しようと関係ないだろ!」




困った顔して椅子から立ち上がった創が、悠の顔に近づき言い放った。


「何をするのもお前次第だ。だが最終的に苦しむのは彼女だ…よく考えろ。」





これからの仕事。これからの将来。


兄貴が言いたいことはわかっている。わかっているんだ。





でももう止められない。


出逢ってしまったのだから…。


忘れられないこの思い。ずっと抱えてきた思い。


やっとめぐり逢えた奇跡…。





でも…。


自分の想いを貫くことで彼女が苦しむのなら…。


―――。

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