星に願いを
日が沈みかけたころ、一人の女の子が声をかけてきた。


「はい、これ。」


そう言ってハンカチを出した。


俺は女の子とあまり話をしたことがなかったから、恥ずかしくて下を向いた。


そのうちいなくなるかなと思ったけど、その子はハンカチを持ったままベンチの俺の隣に座った。


しばらく沈黙だった。


先に声を発したのは彼女だった。


「見かけない顔だけど、この辺に住んでるの?もう帰らないとおうちの人心配してるんじゃない?」


優しい声だった。


「住んでるのは、S区。…親はアメリカにいて日本にいないから、心配なんて誰もしないよ。」


「S区って…ここからだと電車に乗って行く所だよね?」


ビックリしている女の子に、俺もぼそぼそと話をし始めた。


「君だって…親が心配してるんだから、僕なんかほっといて帰ればいいじゃないか。」


「あ、私?平日は一人だから大丈夫。それに家ここだし。」と言って、公園の前にあるアパートを指さした。


「ここの101に住んでるの。」


一人?ガキの俺は理解できなくて、ただ黙って横を向いた。


「じゃぁちょっとだけ、ね。」


彼女はそう言って山の遊具に上り、こっちおいでよと手招きした。


二人が山の遊具に座った時には、既に空が真っ暗になっていた。




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