紫水晶の森のメイミールアン
 あの頃は、可愛い妹のような気持ちだった。純粋に手助けしたかったのだと思う。あんな愛らしい幼い娘が不幸になる事など見たく無いし、私の力で幸せの手助けが出来るのなら。特別許可証を与えれば、学ぶ事も出来るし、住む所にも困らないし、食事や医療の保障もされる。本が好きだと言って、とても利発そうな子だった。彼女が自立出来るまでの間、そっと身守ってやろうではないか……。

 だが、父王の心の臓の病が益々重くなり、王の名代として政務を代行する事も増えて、なかなか会う事も出来なくなっり、そのうち彼女の行方も分からなくなってしまった。中途半端に手助けして、結局彼女は幸せにはなれなかったのか?あの娘はどうなっただろうか?ずっと気になっていた。

 ――6年ぶりに会った彼女はすっかり大人の女性に成長して(きっと苦労して、早く大人になろうと努力してきたのだろう)、立派なレディになっていた。美しさに益々磨きがかかり、心は奪われ手放したくないと思った。

 あの日、”リウス”は身分を明かしたくない忍びの時に使用する偽名で、真の名前は”エメリオス・ラズナルフィ・キングラドロザス”この国の王だと打ち明けた時の彼女の驚きの表情……。心臓が凍りつく心境だった。

 我が父の非道な仕打ちヘの怨言も言わず、ただ静かに受け入れてくれた。彼女の望む『廃妃の件』はそのまま保留のような、互いに驚く事が多すぎて、あのまま話題にも上らずそのままとなってしまったが……。
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