Sweet love‡Bitter kiss 【短編】

恋人で居る時なんて、ほんの一瞬。



俺は…そう思ってる。






紗由と想い合えてた時間を大切にしなかったから。


心の隙間に亀裂が入った。




『梨華子さん…。俺…―』


「やだやだ!聞きたくない!!

まだ答えなんて出さないで。松、あたしの事もうちょっと知ってよ…。」






耳を押さえて梨華子さんは座り込んだ。


自分と被るこの光景…。



俺と梨華子さんは似てるんだ。

だから引力で引っ張られる。



友達って言う名の… 引力。







「松が寂しくなったら側に居たいの。

あたしに電話くれる位の大きさになりたい。」



もう…―


何も言えないだろ。







女の人にここまで言わせて、突き放す事…出来ない。



『…ありがとう。

梨華子さんの気持ちは受け取っとくからさ……』








駅に向かう道から学生達の声が響いてた。


付き合う者同士で帰る奴や、友達と帰る奴。




たくさんの人が居る中で…、梨華子さんが俺を選んでくれた事にも意味があるはず…―







「あたし… 松が好きだからね。」








最後にもう1度だけ……



聞こえた、愛の告白。








梨華子さんの潤んだ唇を見つめてた……。









.
< 10 / 50 >

この作品をシェア

pagetop