Sweet love‡Bitter kiss 【短編】
紗由に…、ここまで引き付けられるのは何でだろう。
別れたからこだわってる訳じゃない。
紗由を俺だけの物にしたい訳じゃない。
繋いだ……
繋いだ手の温もりが…―
いつも、俺を安心させてくれた。
暖かい手の平。
梨華子さんのように潤ってないけど、ちょっとだけ荒れた唇。
笑うと現れる目尻の皺。
“ゆんちゃん”って呼ぶ時の、笑顔。
全てが紗由で…、紗由の魅力で。
包み込む優しさも、天然ボケな所も。
俺が……
愛しくて、大切な人。
『べっ…つにいいんだよ。
紗由は勝手でも。早く携帯返せって!』
直哉の手から奪い取って、紗由にメールを送った。
〔さっき話せなくてごめん!夜電話出来る?〕
でも…――
その日の夜、待っても待っても…。
紗由からの返事はなかった。
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