Sweet love‡Bitter kiss 【短編】
その日は突然やってきた…。
午前中からの晴天とは打って変わって、一雨きそうな雲が広がる……
午後の空。
いつものように、紗由が教室を出て行ったのを確認して鞄を手にした。
前に梨華子さんとの光景を見られてから、無意識にそうしてる俺が居る。
紗由にとっては、気にならない出来事になってるかもしれない。
でも… もう傷つくのが怖い。
真っ黒い雲が空から降りてきて、あっという間に上空を包み込んでいた。
今にも降り出しそうな空を眺めながら、廊下を歩く。
アスファルトからは熱を冷ますように煙が立ち、雨が降る前の独特の匂い。
心なしか、廊下も湿気を帯びてるみたいだ。
昇降口を出て直哉と駐輪場に着いた時、ポケットの携帯が震えた。
〔会いたい〕
それしか書かれていなくて、でも… 相手の気持ちが強く伝わってくる。
『直哉ー、コンビニまででいいや。』
動揺を隠しながら、後ろに跨がった。
風を切る自転車の後ろで、もやもやした感情の渦が喉の近くまで上がってくる…。
何も考えないように……
気持ちを隠すように。
渇いた唾を飲み込んで、目を閉じた。