Sweet love‡Bitter kiss 【短編】
ポツポツと降り出した雨は大粒に変わって、目の前の世界を灰色に染めた。
境内の屋根からは滝のように水が流れ、耳の奥までザァザァと響いてる。
コンビニに着いた時…、雨が顔に当たり始めていて、俺達は小さな神社に来ていた。
俺と… 追い掛けっこ状態の梨華子さん。
ここの神社は地元の人しか知らない位に小さくて、
たまに見かけるのは竹ぼうきで掃除をするおばちゃん。
散歩に来る老人夫婦。
あとは、生徒達の自転車隠し場所になっている。
止む事を知らない雨は、さっきよりも勢いを増して強く地面に弾き返されていた…―
「…来てくれて、ありがと。」
掻き消されそうな音の中で、梨華子さんの声が聞こえた。
会うのはあの日以来で、少しだけ緊張する。
『いや…、俺も話したかったし。』
石段で跳びはねる雨の雫は、同じリズムで踊ってて…。
俺の心臓の音とシンクロしていく。
.