Sweet love‡Bitter kiss 【短編】
携帯のメモリーから紗由の番号を出して、大きく深呼吸をした。
肺まで流れる雨の空気が苦しくて…、一気に緊張が高まってくる。
毎日見てた筈の番号が…
いつの間にか見なくなってた。
忘れようとしたアドレスも…
忘れられなかった。
どうして紗由じゃなきゃダメなんだ。
今隣で涙を飲み込んでる梨華子さんじゃ……
どうしてダメなんだよ。
苦しくて、男のくせに涙が止まらなかった夜があった。
諦めようとした…。
違う人を好きになろうとした…。
でも結局…―
紗由の笑った顔を見ると、心が引き戻されていく。
紗由しか居ないなんて思えないけど…。
今の俺に出来る事。
紗由に想いの全てを伝える…――