Sweet love‡Bitter kiss 【短編】
『梨華子さん、どうかしたんスか?』
さりげなく腕を払おうとしたその時だった…。
「ゆんちゃん…?」
背中から聞こえた声に、思わず目をつぶった。
こうなる気がしてたんだ。
会いたくないって感じてる時に……
紗由は来る。
右腕には梨華子さんがばっちり腕を絡めていて…―
誰がどう見たって… そういう光景。
いくら鈍い紗由だって、この状況は理解出来ると思う。
「直哉、ちょっと松借りるね!!」
ぐいぐい手を引いて梨華子さんに引っ張られる。
香水の香りがして、俺の体中が侵食されるみたいだ…―
背中に紗由の視線が刺さる。
痛い位に… 突き刺さる。
梨華子さんにはわかったんだろうか…。
さっき声を掛けてきたのが、俺の元彼女だって。
隣で歩く顔が険しくなってる。
口をキュッと結んで、腕を掴む力が……
強くなってた。
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