ねぇ、好き。上
千尋は、走って帰って行った。
あたしだけ、屋上に取り残されて…泣いた。
ポタ…
拭っても拭ってもこぼれ落ちる雫たち。
裏切られた。
千尋に…。
明日、凛をとられるかもしれない。
ギィィー…
ドアが開く音がした…。
千尋っ!?
そう思ったけど…
違う人で…
「…幹也くん?」
「長瀬…じゃなくて…、岩佐…」
「…ど、どうしたの?」
あたしは、急いで拭って元気なふりをした。
「いや…水野さんが勢いよく飛び出してきたから…」
「…そっか」
「うん…」
「大丈夫…?」
「え…あ、うん…」
「嘘はダメだよ」
「…」
「泣きなよ」
そんなこと言わないでよ…
泣いちゃう…じゃん…
「…うぅ…」
「手、冷たいじゃん。中、入ろ?」
「…」
泣いているあたしを、幹也くんは教室に連れて行ってストーブの前に
座らせてくれた。