ねぇ、好き。上
「いってきまーす…」
玄関を出ると冷たい風がビュンビュン吹いている。
あたしは、身震いをした。
「さむっ…」
マフラーをぐるぐる巻きにして、手袋をはめて登校した。
今日からあたしは、高校1年生。
行きたい高校に見事合格できたけど、
学校に行く目的は、友達を作って楽しい高校生活を送ることではない。
頑張って勉強して学年トップを目指して有名な東大学に入ること。
あたしの人生に友達なんか存在しない。
あたしは、クラスを確認し自分の席に着きもうすぐ始まる授業に向けて
参考書を広げ、ノートを取り出し予習をする。
カリカリカリ…
ポキッ…
カチカチカチ…
カリカリカリ…
「ねぇねぇ、名前何て言うの?」
あたしは動かしていたシャープペンを止め、声がする方を向いた。
「…何の用ですか?」
「いや、だから名前何て言うの?…あっ、私は井川秋奈だよ。よろしくね?」
井川秋奈と名乗る彼女は、よろしくと言ってきた。
「長瀬桃花ですけど、よろしくしません」
「…えっ?」
「だから、あなたなんかと友達なんかになりたくないと言っているんです」
「な、なによそれ」
「そのままの意味ですよ」
「ひどい…!もういい」
「勝手にどうぞ」
井川秋奈という人は、違う子の所へ行ってしまった。
ほらね。
どうせ、本当はあたしなんかと友達になんかなりたくないんでしょ?
自分が1人になるのは嫌だからって、適当に友達を作ろうとしてる奴なんか信用できない。
そんなので友情を築くなら、そんな友情なんかいらない。