ねぇ、好き。上
「お帰りー、友達できた?」
友達なんかいないよ。
だって、作らないってあの日決めたから。
だけど、大好きなお母さんに心配はかけたくないから…
「うん、できたよ」
「あら、よかったね!名前なんて、言うの?」
友達なんかいないから、名前なんて知るはずもない。
だけど、今日たった1人だけ話した人がいる。
井川秋奈…。
まぁ、この際適当に言っておけばいいんだ。
「井川秋奈って言う子」
「そうなの~、どんな感じの子?」
どうして、そんなに興味津々に聞いてくるの?
本当はいないのに…
あたしは、ウソをつくのが嫌いだ。
でも、あの日だけは誰にも知られたくないから
言わなければいけない。
「元気な子で明るい子」
「そう~、よかったねー!今度家に遊びに来てほしいわ」
「うん、今度聞いてみるね」
あたしは、そう言った後自分の部屋に行った。
大きなふわふわのくまのぬいぐるみを抱いて、
声を押し殺して泣いた。