ねぇ、好き。上
水野 千尋
初日の授業は、全部自己紹介で終わった。
嫌でも覚えてしまうクラス全員の名前。
あたしには、覚えたって何の意味もない。
価値のないもの。
放課後…
あたしは、教科書やら参考書やらを鞄の中に入れてさっさと帰ろうとしていたら、
クラスの子があたしの肩を叩いた。
確か、この子は清水日美香さん。
「長瀬さん、水野さんが呼んでるよ」
「…?ありがとうございます」
あたしは、同級生にも敬語。
馴れ馴れしい言葉を使ったら、みんな近くに寄ってくるから。
だから、あたしは敢えて敬語で話すようにしている。
「いいよ」
あたし的に、清水さんはいい人だと思う。
みんなを仕切るリーダーシップがあるように見えるから。
でも、仲良くはなりたくない。
まぁそれはどうでもいいけど…
水野さんって、誰だっけ?
自己紹介でこんな子いたっけ?
「あの、何か用ですか?」
「長瀬桃花さんだよね?」
「はい、そうですが…」
「よかったら、私と友達にならない?」
友達?
「あの、名前は?」
「まだ、覚えてない?私は、水野千尋。よろしくね」
あ~、確かにこんな感じの名前の子いたかもしれない。
「ごめんなさい。無理です」
「どうして?」
どうしてって…
あの日、あんなことがあったから…なんて言えない。
「理由言ってくれないと私、悪いけど諦めないよ?」
「どうしてあたしなんですか?あなたなんか可愛いんだからあたしなんかじゃなくて
他の子でもいいじゃないですか」
こんなあたしと、どうして仲良くなりたいって思うの?
他の子でいいじゃん。
「私は桃花ちゃんと仲良くなりたいんだよ?他の子は関係ないよ」
「だから、どうしてですか?」
「理由はないかな…。だって、友達を作るのに理由なんて必要ないでしょ?
桃花ちゃんは、この子が可愛いから友達になろうとか、この子はブスだから友達になんかなりたくないとか思ってるの?」
「友達に、ブスとか可愛いとかそんなことは関係ないと思いますけど…」
「それと一緒だよ。私もそう思う。ね、友達になって?」
そんなに言われても、困る…
しかも、あたしは決めたんだから。
「やっぱり、すいません」
「ねぇ、どうして友達作らないの?」
どうしてそんなこと、聞いてくるの?
あたしに過去のこと、思い出させないでよ…
あんな出来事消し去りたい…
「ねぇ、どうしてなの?教えて?」
言うべきか、言わないべきか…
「あたしが言ったら、あなたは諦めてくれますか?」
「うん、話を聞いて納得したら諦める」
しょうがない…
諦めてくれるなら、言うしかない…
言ったら、友達になることを諦めてくれるなら…
この時、あたしは彼女が言った“納得したら”という言葉は聞こえていなかった。
今思うと、千尋は、他の子とはどこか違うオーラを出していた気がする。
嫌でも覚えてしまうクラス全員の名前。
あたしには、覚えたって何の意味もない。
価値のないもの。
放課後…
あたしは、教科書やら参考書やらを鞄の中に入れてさっさと帰ろうとしていたら、
クラスの子があたしの肩を叩いた。
確か、この子は清水日美香さん。
「長瀬さん、水野さんが呼んでるよ」
「…?ありがとうございます」
あたしは、同級生にも敬語。
馴れ馴れしい言葉を使ったら、みんな近くに寄ってくるから。
だから、あたしは敢えて敬語で話すようにしている。
「いいよ」
あたし的に、清水さんはいい人だと思う。
みんなを仕切るリーダーシップがあるように見えるから。
でも、仲良くはなりたくない。
まぁそれはどうでもいいけど…
水野さんって、誰だっけ?
自己紹介でこんな子いたっけ?
「あの、何か用ですか?」
「長瀬桃花さんだよね?」
「はい、そうですが…」
「よかったら、私と友達にならない?」
友達?
「あの、名前は?」
「まだ、覚えてない?私は、水野千尋。よろしくね」
あ~、確かにこんな感じの名前の子いたかもしれない。
「ごめんなさい。無理です」
「どうして?」
どうしてって…
あの日、あんなことがあったから…なんて言えない。
「理由言ってくれないと私、悪いけど諦めないよ?」
「どうしてあたしなんですか?あなたなんか可愛いんだからあたしなんかじゃなくて
他の子でもいいじゃないですか」
こんなあたしと、どうして仲良くなりたいって思うの?
他の子でいいじゃん。
「私は桃花ちゃんと仲良くなりたいんだよ?他の子は関係ないよ」
「だから、どうしてですか?」
「理由はないかな…。だって、友達を作るのに理由なんて必要ないでしょ?
桃花ちゃんは、この子が可愛いから友達になろうとか、この子はブスだから友達になんかなりたくないとか思ってるの?」
「友達に、ブスとか可愛いとかそんなことは関係ないと思いますけど…」
「それと一緒だよ。私もそう思う。ね、友達になって?」
そんなに言われても、困る…
しかも、あたしは決めたんだから。
「やっぱり、すいません」
「ねぇ、どうして友達作らないの?」
どうしてそんなこと、聞いてくるの?
あたしに過去のこと、思い出させないでよ…
あんな出来事消し去りたい…
「ねぇ、どうしてなの?教えて?」
言うべきか、言わないべきか…
「あたしが言ったら、あなたは諦めてくれますか?」
「うん、話を聞いて納得したら諦める」
しょうがない…
諦めてくれるなら、言うしかない…
言ったら、友達になることを諦めてくれるなら…
この時、あたしは彼女が言った“納得したら”という言葉は聞こえていなかった。
今思うと、千尋は、他の子とはどこか違うオーラを出していた気がする。