サワーチェリーパイ
「婚約者か……、結婚するんだな」
「誰がだ? 」


単語に反応した陽生がとなりを見ると、小声でウェディングマーチを歌っている晴斗に気付く。


「なあ、おかしいのか。コイツは」
「いや、多分いつもの妄想だから気にするな。それより高田が出て来たみたいだぞ」


リンクの上に視線を戻した陽生は、氷上に立つ黒い衣装の樹に目が釘付けになる。


『リンクの王子様』の名に相応しい姿勢といでたちで、こちらに向けて手を振っていた。


思わず両手を振り上げて、それに応えると、樹は驚いた顔をする。
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