サワーチェリーパイ
樹の演技は、トップバッターの選手に負けないもので、そこへこの2年間に伸びた背の勢いも加わり、ダイナミックに見える。


ただし、ジャンプをミスしてしまい、4回転を2回してはいけないのに、やってしまった。


減点は間違い無いと、陽生は思わず両手を組んで目を閉じる。


「なんかミスったのか? 」


のんきに聞いて来る晴斗をにらみつけ、理由を説明し始めた。


「アクセルジャンプでトリプルを決めたのに、もう1回別のジャンプの時にトリプルをやっちまったんだ」
「意味わかんねー」


わずか2分50秒の演技が終り、採点を待つ間、祈る様な気持ちでリンクサイドの樹を見詰める。


そんな表情を見るにつけ、晴斗の不安が大きく広がった。





< 109 / 293 >

この作品をシェア

pagetop