サワーチェリーパイ
帰りのバスの中で、落ち込んでいる陽生を見て、元気付けようと晴斗は肩を叩く。


「お前のせいじゃないだろ、あいつの実力不足だ」
「実力はあるのに……」

バスが学校に到着し、皆が降りると、晴斗は陽生の手を取って街に飛び出した。


「家に帰ってもお前は1人だろ、だったら遊びに行くぞ」
「そんな気分じゃない」
「いいから来いって」
「原稿もあるんだ」


言った後、しまったと口をおさえる陽生。


そう、今は締め切り直前で遊んでいる場合ではない。


「ゲンコー? 」
「あ、現代国語のレポートが」


ありもしない教科をでっち上げて、言い訳を始めたが、晴斗は引っ込まない。
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