サワーチェリーパイ
そんな中、台所では器用な手つきで陽生が包丁を操っていた。


「上手ねえ、お母さんもお料理上手いの? 」
「そんな事無いですよ」
「お嫁さんに来てくれたらうれしいわぁー、ホラ、家は男ばっかりだから」


ホームドラマの母親と、息子の彼女らしい会話に気付き、あわてて訂正をする。


「彼女じゃないんです、単に友達ってだけで」
「え、そうなの? 」
「色々あって落ち込んでたら、晴斗が家に来いって」
「あらそう、あの子案外優しいのよね。まあ、そこがダメなんだけど」


大して驚きもせず、味噌汁に豆腐を入れて料理を完成させた。


「じゃあ、これ運んでちょうだい」
「はい」


居間に戻ると、ササッと男達は体勢を戻し、何気ない風を装う。

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