サワーチェリーパイ
「これは、あたしが味付けしたぞ」
「おう」


箸でつまんで早速口に入れると、熱々の油と肉が襲い掛かる。


「あっぢいいい! 」


口の中を思い切り火傷した晴斗に、冷たい水を差し出しながら母が呟く。


「どうしてこう、バカなのかしらね」
「昔っから治らないな、お前は。俺と海に行った時もそう、カニには手を出すなって言ったのに、大事な物をはさまれたし」


兄は、天をあおいで溜め息をついた。


「ドライブに行けば、トイレが間に合わないから窓からしようとして、危うく大事なモンを落とす所だったし」


父もバカに付ける薬は無いとばかりに、横を向く。


「神輿に乗せれば、調子に乗って下に落ちたしな」


祖父がそう言ったのを聞きつけ、母が鋭い一言を浴びせる。

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