サワーチェリーパイ
印税は入るものの、今や携帯小説はあふれており、映像化されるチャンスでも無ければその収入も途絶えてしまうだろう。


そうなったら最後、故郷へ戻らなくてはならない。


気持ちの無い言葉をモニターへつづる内に、疲れ果てた陽生は窓を開けて外を見る。


「樹、いつも一緒に居たじゃないか。何でそんなに冷たいんだよ」


そう呟いて、眼下に広がる西東京の夜景に目をやると、暖かい家の照明に涙をこぼした。


「帰りたいな、もうダメだもん」


でも、仕事として引き受けた以上は何とか仕上げなくてはいけない。


こうして、陽生は3日間学校を休む事になった。

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