サワーチェリーパイ
「どうしたんだよ、一体」
「色々大変なんだ、もう帰ろうかな田舎に」
「理由を言えって、隠し事ばっかしてないで」


そう言われても、正直に話せない陽生。


携帯小説家としての正体を明かせば、きっと大騒ぎになると思ったからだ。


「まあいい、な、これでも食って元気出せ」


紙袋の中からローストビーフサンドと、サワーチェリーパイを出して、小さなテーブルの上に並べる。


「皆、心配してこれを俺に持たせたんだ」


そしてキッチンに立つと、コーヒーメーカの煮詰まったコーヒーを捨てて、入れなおし始めた。

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