サワーチェリーパイ
店を出た2人は近くの覇闘公園のベンチに座り、ただ黙っていた。


「何か言われたのか? お前の書いたモンで」
「言われた……」
「つまんねーとか? 」
「それに近い、激しい恋愛が描けてないって」


その言葉を吐き出すと、下を向いて溜め息をまたつく。


彼女に取って、一番切実な問題だから。


今、本が売れなければ東京での生活を止めて田舎へ帰らざるを得ない。


「なあ、お前逃げてばっかじゃダメじゃないの? 」
「逃げてって……」
「好きならさ、体ごとぶつかればいいじゃん」
「ぶつかろうにも、相手に拒否されてたら仕方ないだろ」


晴斗の言葉が胸の中にグサっと刺さり、思わずケンカ腰になる。


肝心の樹からはあれ以来連絡が無く、拒否されていると思い知ったからだ。
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