サワーチェリーパイ
順番が来て一番先頭の席に座る事になり、顔面蒼白の晴斗。


「大丈夫だ、お前なら出来る! 」
「お……おう」


励ましを込めて手を握られた瞬間、妄想ドライブで乗り切ろうと決意を固めた。


『ここは高速、俺と
 陽生はドライブ中。
 俺、運転。
 陽生が助手席で……』


そう思う事で、この超高速コースターを脳内変換し始めたが、彼の耳にはガコンガコンとレールの上を上昇する嫌な音が聞えて来る。


『でもって、後ろ
 から嫌味な外車が
 アオりをくれて来る。
 俺、頑張ってアクセル
 踏んでそいつを振り
 切るぅぅぅうーっ! 
 あーでも、やっぱこれ、
 ジェットコースター
 じゃん! 』


ゴオオオオーッと音を立て、急下降するコースターに現実へと引き戻される晴斗。


「キャーッ! 」


他の乗客からも悲鳴が上がり、いやおうなしにも体が浮きそうな感覚になって、つい陽生の手をグーッと握りしめてしまった。
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