サワーチェリーパイ
ここでムードを取り戻そうと、晴斗はとなりに座る陽生に抱きついた。


「こんなに人から想われたのは、初めてだ」
「片思いにはしたくないし、幸せにしたい」


微妙な空気が、2人の間に漂う。


フラたばかりの女、そして、彼女に想いを寄せる男。


ここはホテル、部屋の中には2人だけ。


普通の人間であれば、当然の成り行きになるけれど、晴斗はそこまで押す事は絶対に不可能な体質である。


そう、たぐいまれな妄想癖があったから。


抱きしめたまま、妄想の翌朝を迎えたのだ。


『ベッドの中で2人
 が目覚めると部屋中
 まぶしい朝の光で
 一杯になってて、
 俺は優しく眠そうな
 陽生にキスしちゃう
 だろー。
 それで、モーニング
 コーヒー飲んで……』

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