サワーチェリーパイ
晴斗は、陽生のマンション前に到着するとメールを送った。


『今、陽生んチの前に居る。出て来てくれ』


青まむしドリンクのおかげで気合いがみなぎっており、今なら何をしてもよいのではないかと鼻息も荒い彼の目の前に、陽生が現れる。


「何で、俺の真剣な気持ちをシカトすんだよ。お前、面倒だから逃げ回ってるだけだろ」
「今はそれどころじゃ無いって、メールでも伝えた」


晴斗の目が座っていたのに気付き、それ以上は口を開こうとしないまま、陽生はあきらめてくれるのを待つ。


「あのフィギュア野郎よりも、絶対にお前が好きだし、何度も本気でコクって来た。このチキンで情けない俺が」


普段の彼なら涙を流しながら、このセリフを言ったであろう。


だが、今の彼には青まむしの持つ強靭なパワーと粘り強さが内蔵されている。
< 215 / 293 >

この作品をシェア

pagetop