サワーチェリーパイ
『陽生か? 』
「何? いきなり電話して来て」
『お母さんな、乳ガンになってた』
「え……」


先日、ここに来た際に隠していたのはこれだったのかと陽生は思わず床へうずくまる。


「ヤバいの? 容態は」
『まだ初期だから、お前に言うかどうか迷ったけど、でも、手術をしなくちゃいけない』
「すぐ帰る」


即答して電話を切ると、晴斗が心配そうな顔でたずねる。


「どうかしたのか? 」
「母さんがガンで、すぐに帰らなくちゃいけないんだ」
「ガンって」


先ほどまでの勢いを失って、晴斗はうなだれた。
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