サワーチェリーパイ
周囲のカップルを見習って、腰に手を回すと踊り始める2人。


「ごめんな、待たせて」

陽生が耳元でそっとわびると、晴斗はこれまでの事を全て忘れてしまう。


「俺、夢みたいだと思ってる。陽生とこうして踊れるなんてさ」
「最初、お前とこんな展開になるなんて、予想もしてなかったけどな」
「予想出来ないのは、陽生の小説と同じだ」


ムーディーな曲は続き、近くに居たカップルから派手なキスの音が聞こえて来る。


しかし、2人は恥ずかしくて、ただ踊るだけだった


「ガイジンって凄いよなー」
「俺らにはマネ出来ないよ」


それでも体を寄せて、静かに揺れているといやでも気持ちが盛り上がって来る。


「陽生」


男らしく名前を呼んだ晴斗が、唇を寄せた。
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