サワーチェリーパイ
ドアの先には、私服姿の陽生が紙袋をぶら下げて立っていた。


「いらっしゃい、ガキ共があんたを待ってたよ」


マサヨがそう言って出迎えると、入りづらそうにしていた陽生の手を引いてボックス席に案内をする。


「皆、ごめん」


沈黙の中、深く頭を下げてから紙袋をテーブルに置くと、そのまま出て行こうとする彼女の前に磨朝が立ちふさがった。


「待ちなさい、ちゃんとお別れの挨拶くらいしなさいよ」
「磨朝さん、あたし……今は何にも言えなくて」
「結論なんて誰も聞いてないわよ、そんなの晴斗君に直接言えばいいじゃない。あたし達が聞きたいのは、挨拶」
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